春、私は焦っていた。
展示会まであと数ヶ月、まだ一枚も絵が描けていない。
どうしよう。何を描こう。
何を描けば、みんな喜んでくれるだろう。
何を描けば、わー!すごいって言ってくれるだろう。
これだ!と思っては
いや、違う、と落ち込んで
ぐるぐる同じところを回りながら時間だけがさらさらと過ぎていった。
使えない脳みそめ!っとヤケクソに落書きを始めた。
ここしばらく、背伸びして、すごいものを描こうとして、落書きすら綺麗にカッコつけていた。
久しぶりにぐしゃぐしゃ絵を描いた。
・・・あれ?
これじゃないか?と思った。
箱の中を掻き回して何かを探している自分。
「さがしもの」
これだ。
むくむく描きたいものが湧き出てきた。
幸いさがしものは日常のあちこちに散らばっていたのだ。
スマホどこに置いたっけ?
いいアイディアはないか?
もっといい働き方があるんじゃないか、
ちょうどいい上着、
面白いことないかなぁ、
お金どこかにないかな、
今日のお昼ご飯のレシピなんかないかな、
もう片方のなにか、
そのまま描けばいいじゃないか。
背伸びしてぼやけていた視界がスルスルとピントがあった気がした。
いつもこんな感じだ。
喜んでくれるか、わーって言ってくれるかはわからないけど、
楽しいも辛いも描けばいい。
そのまま描けばいい。
そして無事、展示会に間に合いました。
「さがしもの」 みうらとも 作品展
2024年6月4日(火)ー7月31日(水)
Open 16:00- Close 23:00 L.o. 22:00 Thursday Close
殻々工房 カラカラコウボウ
〒325-0303 栃木県那須郡那須町高久乙820−162
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